第1回 「認知症に対する世界的アクション」

 「認知症に対する世界的アクションに関する第1回WHO大臣級会合」

ジュネーブで開催された同会合には、参加者は80の加盟国、80の団体や学会、40のNGOから約400人もの参加があったと主催者からの発表がありました。
今回の会合では参加者の合意により、「 アクションの呼びかけ(Call for Action)」がありG7を超えた展開に向けた協働が確認されました。

アクションの呼びかけ(Call for Action)

  1. 認知症は、現在世界で4700万人以上の人が直接的にその影響を受けており、2030年までに、このような認知症の人は7500万人になると推計されている。その数は2050年までに3倍になると考えられている。我々の世代における、公衆衛生上の主たる課題の一つである。しばしば隠され、誤解され、過小評価されるが、認知症は個人、家族及びコミュニティーに影響を与え、また障害をもたらす要因として増加しつつある。
  2. 一般的に信じられているのとは異なり、認知症は加齢の自然経過や必然として生じるものではない。それは、記憶、言語、認識、思考といった脳の認知機能を低下させる状態のことであり、日常生活を維持する能力に大きな支障をもたらすものである。認知症の最も典型的な型はアルツハイマー病と血管性認知症である。心血管疾患の危険因子を軽減することにより、ある型の認知症の危険を下げることができるかもしれないというエビデンスが出ている。
  3. 認知症が、認知症の人自身、社会、経済にもたらす結果は莫大なものである。認知症は、政府、コミュニティー、家族、個人による長期的なケアに要する費用を増加させ、経済の生産性の低下を招く。2010年の認知症ケアに係る世界のコストは6040億米ドル-世界のGDPの1%-と推計されている。また、2030年までに、世界の認知症の人のケアに係る費用は1.2兆米ドル以上とも推計されており、世界の社会的・経済的な成長を減速させる可能性がある。
  4. 認知症の人のうち、おおよそ60%の人々が低中所得国に居住しており、この割合は次の10年間で急速に増大すると考えられているが、これは、国家の間や人々の間における不平等の増大をもたらすかもしれない。
  5. それゆえ、認知症に関するアクションを推進し、認知症とその影響によって 課せられたチャレンジに取り掛かるために、持続した世界的な取組が必要となっている。
  6. 世界的な取組のためには、以下に述べる原則やアプローチを共有することが必要である
  • スティグマや差別を乗り越えるとともに、認知症の人本人とその介護者や家族が全てに積極的に参画するよう力づけ、促す;
     予防とケアを改善し、研究を刺激するために、全ての関係者間の協力を促す
  • 認知症の予防、ケア及びリハビリテーションの状況を、加齢、障害及び精神疾患を含めた非感染症の疾患に関する施策に取り込む;
     既存の専門知識、協力関係及びメカニズムに基づき、効果が最大となるようにする
  • 効果的な治療や実践とリスク軽減の介入の発見に向けた直接的な取組を行いながら、認知症の人に対するケアや介護者支援が持続的に改善されるよう、予防、リスク軽減、ケア及び治療のバランスを取る
  • より迅速に学びや行動に活用できるようにするため、エビデンスに立脚したアプローチと学んだものを共有することを奨励し、開かれた研究とデータ共有の発展を促進する
  • 政策、プラン、プログラム、介入及びアクションが、認知症の人やその介護者のニーズや期待そして人権に配慮したものとなるように強調する
  • 認知症の人本人とその介護者が医療ケアと社会ケアを平等に受けられるよう推進することを含めて、認知症に対する取組の全ての側面において、公平性を基礎に置いたアプローチとユニバーサル・ヘルス・カバレッジの重要性を取り入れる。

我々、当会合の参加者は、認知症の人本人、その介護者、家族及びコミュニティーのため、以下のアクションを呼びかける

  • 国家的・国際的なリーダーが参加する関連したハイレベルのミーティングやフォーラムにおけるアジェンダとして、認知症に関する世界的な取 組の優先順位を上げる
  • 認知症の問題への対応を加速するために、能力、リーダーシップ、ガバナンス、多岐にわたるアクション及び協力関係を強化する
  • 認知症に対する理解を促進し、認知症の人の人権への配慮を含めて社会の認識や関与を高め、スティグマや差別を軽減し、認知症の人の参画、社会的包摂及び統合を推進する
  • 今ある、また明らかになりつつあるエビデンスに則り、認知症に対する予防、リスク軽減、診断及び治療を前進させる
  • 認知症の人本人とその介護者のニーズに応えるためにテクノロジーや社会の革新を促す
  • 認知症研究における共同の取組を増加させ、協調を促進していく
  • 認知症の人のために従事する人々の能力向上を含めて、認知症の人に対する医療・社会的なケアの連携のとれた供給を促進し、個人、家族及び社会の全てのレベルにおいて世代を超えた相互のケアを支援し、介護者や家族のための支援・サービスを強化する
  • 認知症の人の生活を改善するための計画、施策及び介入の細部において、性差によく配慮したアプローチを行うことを支援する
  • 今ある、また明らかになりつつあるエビデンスに則り、認知症に対する予防、リスク軽減、診断及び治療を前進させる
  • 特に資源の乏しい状況において、認知症のケアに対する障壁となるものを明らかにして対策を講じていくよう、取組を進める
  • 特に低中所得国において、認知症の人のためのあらゆるレベルの計画や施策を支援していく国際的な取組を強化する;WHOが、認知症に関する世界的な取組を推進し、モニターするためのリーダーシップの役割を、各国や国際的なパートナーと十分に協力しながら、その権限と行動計画の範囲で十分に果たすことができるよう、WHOによる取組をサポートする。

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