Sアミーユ 介護職員による入所者殺害事件
さまざまなメディアで報道されていますが、ついに容疑者が2月16日に逮捕されました。
結局のところ当初から疑われていた介護職員が犯人だった分けですが、事件が起きてから実に1年2ヶ月が経過しての逮捕劇です。あれだけの狭い空間と、限られた人の出入りの環境下での犯罪なのに、時間がかかり過ぎと思うのは素人の考えなのでしょうか?
事件の詳細はニュースを読んで頂くとして、以下は今回の事件で感じた事を記してみました。
犯行に至った理由は実に身勝手な理由
「仕事のストレス」
「介護に手がかかる人だった」
「入居者の言動に腹が立った」
など、人を殺害するだけの理由としては、身勝手で介護職の人からすれば日常的な事柄ばかりです。 手がかかったり、認知症などで荒々しい言動になるからこそ、自宅での生活が困難になり施設を利用するのです。 確かに処遇や劣悪な環境、人員不足など問題は多々あるのは事実ですが、上記の様な事を理由に挙げてしまっては、施設の存続する意味自体をも否定しかねません。
さらに容疑者は、
「殺そうと思ってやった」
「ベランダから投げ落とした」
と衝動的に行なったのではなく、計画的な犯行を示唆する供述も報道されています。 普通の思考があれば、人を突き落とした職場に日々出勤し、それを3回も連続する精神状態も異常としか考えられません。
今回の事件では、一般的な常識では考えられない、介護業界の現状や問題点も浮き彫りになったと私は感じています。
Sアミーユ 入所者転落事件の問題点
- なぜ一人目の事件で原因追及がなされなかったのか?
- 原因追求するための証拠が得られない、閉鎖的な介護現場の問題点
- 職員の証言だけを鵜呑みにせざるを得ない現状(人の目が少ない、入居者からの証言が得ずらい)
- 一人目、二人目と連続転落したにも関わらず、施設の甘い対応
- 転落事件後の監督担当行政の介入の甘さ(介護現場は疑われずらい)
- これだけの事件を起した事業所への甘い行政の対応(閉鎖させる訳にもいかない現状)
介護はサービス業と言われますが、一般的なサービス事業者がお客様を殺害したらどうなりますか? 業種が異なるので全てを当てはめる事は出来ませんが、これだけの事件を起しても施設を求める人がいる限り、存続していくのが現状なのかもしれません。
この事件で一番の被害者は、命を奪われた入居者様であり、今現在も入居している方々やご家族です。また一方で真面目に介護をしている介護職の皆さんです。
虐待報道が増えてくると施設を探されている家族から、「この施設は虐待はないですよね」と見学時に聞かれると言った話を以前聞いた事があります。
これから介護の需要は一段と増していきます、その一方で介護の仕事に従事したい人は減っていくと思います。 処遇を改善するにはお金が必要です、そのお金はどこから出るのかと考えれば税金や介護保険料、また利用する方々の負担金です。 昨今は貧困率が高まっていると報道でも耳にしますが、そんな世の中で介護保険料や利用者負担金を上げることは、簡単な事ではないと思います。 報道などで介護の現状を知った方々の多くは「給与を改善してあげて」と言って下さりますが、実際に自分達の負担金が2倍に増えるとなればどうでしょうか?
介護現場での仕事の難しさや問題点は、テレビの報道や、人の話を聞くだけでは理解する事は大変困難です。それだけ様々な問題が絡み合っている厄介な仕事なのです。
介護業界からの悲痛な叫び、介護職員からの処遇改善などの訴えだけではなく、利用する方々の意見など多方面の話しに耳を傾けてみる事をお勧めします。
処遇を改善すれば全てが解決する分けでもなく、事業所ごとの「ケアの質」のバラつきをどうすれば良いのか、今の資格制度で介護職の専門性が正しく評価出来ているのか、いま一度見つめ直すきっかけにする事で、亡くなられた方の死が無駄にならない事を願うばかりです。
-追記-
先日ハローワークに用事があり訪問したのですが、職業を紹介する窓口から聞こえた言葉にガッカリしました。「介護なら採用してもらえますよ」って、やはり誰でも従事できる介護職に専門性はないのでしょうか…